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2006/01/28

D.E. scene1031

0601-1700
「行け! 女が待っているのだろう?」

フェーンを無理やり納得させ、先に行かせたローニンは、話している間片時も目を離さなかった巨大な柱を見据えたまま、気軽な様子で声をかけた。
「出てきたらどうだ」

0601-1701
柱の陰から音もなく現れたその巨体の持ち主は、今にも食いつかんばかりに鋭い牙を見せつつ口角をゆがめた。どうやら笑っているらしい。
「見つかってしまったか。不意打ちとの命令であったが、まあ、おぬしほどの遣い手が相手なら、仕方あるまい」
グッグッグッと咽を鳴らし、まったく残念さのかけらも無く、むしろうれしそうにそう言うのだった。
「わざわざ気を放っていたように感じたがな」
ローニンは力を抜きつつも、鱗ひとつの動きも見逃さぬ鋭い目で見つめながら問う。
「さて?」
ドラゴニアンはガチガチと鱗を鳴らし、肩をすくめて見せた。
「何はともあれ、尋常に勝負となったわけだ。名乗ろうか」
「ふ、おかしな竜人よ」
「我が名はガルバトス。ホーランが一人(ひとたり)よ。・・・ああ、お前達の言葉で言うなら、騎士階級といったところか」
「おれはローニン。主無きサブライだ」
「先ほどの小僧が主ではないのか?」
「漢(おとこ)が漢に惚れたまで」
「惚れて死ぬるか?」
「それも一興」
「ハッ、おかしな人間よ・・・では、死合おうか」

0601-1702
ガルバトスと名乗ったドラゴニアンは半歩下がると同時に右腕を前にだらりとさげた半身の構えを取った。
「カタナといったか。若き日に食ろうた人間が使った剣。我が竜鱗を切り裂かれて驚いたわ。しかも、おぬしのほうがはるかに技を練っておるな。おそろしや」
グッグッグッと咽の奥から音が漏れる。楽しくてたまらぬと笑っているのだ。

ローニンは腰を落とし、右手を柄にかけ、刀を抜き放・・・とうとしたまさにその瞬間、ガルバトスの巨体が音も無く動いた!
いや、旋風を巻き込む轟音が後から届く!

0601-1703
視界の端からすくい上げるように伸びたガルバトスの右腕が刀の柄を押さえ、抜刀を阻む。
それと同時に、左手がローニンの死角から襲い掛かった!

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