D.E. scene1033
それはかつてガルバトスが自分の師を斃した技。右爪を切っ先に打ち出される超高速の体当たり。
ローニンがいかな達人であろうと、これはかわせぬ。止められぬ。
ローニンは失われた左手を前に出すかのように体をひねり、左の肩で鋼をも切り裂くドラゴニアンの爪を受け止めた。
ガキッ!
脆弱な人間の体を貫くはずの右爪は火花を散らしてはじかれ、その勢いのまま後ろへと流れる。
ローニンは肩を押された力そのままに、右腕を前に突き出した。
300年ほども昔、我らが聖山に人間の娘が入り込んだ。
我は、不埒な人間を追い返そう、いや、喰ろうてくれようと人間に襲い掛かった。
爪も牙も空を切る。
傷つかぬはずの竜鱗が切り裂かれる。
人間の数倍のこの体躯が宙を舞い、たたきつけられる。
・・・
年若い我は、なすすべも無く人間の娘に降りた。
・・・
我は人間に教えを請うた。
話すうちに、達人となるために技を積むという人間の娘に親近感を持ったのかも知れぬ。我らは、竜となるために徳を積むのだ。
人間は、ならばともに修行せんと言い、我が師となった。
我と師とは30年ほどもともに修行し、我はドラゴニアンの弱さを知った。
はじめこそ、我が同属は我を「汚染された」と言ったが、技を積んだ我にかなうものも無く、皆黙った。
ある日、「おまえは強い。わしが知る何者よりもだ。わしの技が衰える前に、死合おうではないか」と師が言った。
そして・・・
ドーン
ローニンが刀を引き抜くと、ガルバトスの巨体は地に落ちた。
「強敵であった。さらば」
ローニンが半ば崩れるように座り込むと、引き裂かれたキモノの肩口が翻り、ちらりと銀の光が見えた。
座ったまま荒い息を吐く。
致命的な爪や牙は避けたとはいえ、強靭なドラゴニアンの体とぶつかればただではすまない。折れてこそいないものの、全身の骨がヒビだらけなのだ。
その時、
カンカンカンッ
遠く微かに、入り口のほうからヒールを鳴らす足音が聞こえた・・・。
『ドラゴニアン・アイズ』、今回はここまででございます。
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コメント
(゚∇゚ノノ"☆パチパチパチ!! はふう…大満足ヾ(@⌒¬⌒@)ノ
大作拝見させて戴きました、お疲れ様です。
緊迫した技の応酬の中で、それぞれのキャラクタの深い
所が活写されてゆく物語は引き込まれて読みました。
違う出会いであれば、ローニンと友にもなれたろう
ホーラン・ガルバトスの英霊に敬礼!
太腿がステキなローニン先生にはどんな秘密が~??
今回印象的であったのはガルバトス登場の画像です。
フォーカスとぼかしが絶妙で、練られた構成の削ぎ落とさ
れた絵画的表現が物凄い迫力を出していると感じました。
その後の画像にも効果的に使われ、スピード感さえ感じ
させてくれました。普段の画像ではあまり見ない、freya様
のセンスの別面を見られて興味深かったです。
投稿: アユミルゲ | 2006/01/31 00:25
先生!カッコイイよ!先生っ!
今回も引き込まれるように拝見させて頂きました(>∇<*)
お写真も緊張感のある空気がたまりません!
次回はまた受信後ですか?
楽しみにしておりますっ!
投稿: pumira | 2006/01/31 13:57
アユミルゲさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
お褒めいただき恐縮です。いやまあ、そこまでたいそうなものでもないですが(^^;。
今回は、格闘小説とその挿絵風にしてみたつもりです。
写真も文章もまだまだですが、楽しんでいただけたなら幸いです。
> ローニン先生の秘密
それが語られるのは次のシーンですが、その前に主人公に話を戻したいところ(^^;。
投稿: freya | 2006/01/31 23:42
pumiraさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
主役が少年少女なので、渋い役どころ総取りの先生なのです(^^。
> 次回はまた受信後ですか?
『ドラゴニアン・アイズ』のお話自体は受信済みなので、気合の問題だったり(^^;。普段の2倍、時間がかかります(^^;。
気長に待ってやってください。
投稿: freya | 2006/01/31 23:51