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2006/04/06

D.E. scene0402

二人の後ろから現れたのは、肌もあらわな黒い革の服に身を包んだ女性であった。
深い思慮を秘めた翠の瞳と、大きくとがった耳を持つ・・・妖精族。


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妖精族の娘は大きく目を見開いたままのフェーンと困惑の表情を浮かべるリンの傍らを通り過ぎ、巨人の隣に立つと振り向いた。
その動きに呪縛をとかれたかのように、正気に返ったフェーンが一気にまくし立てる。
「ここはどこ? あなた達はなに? 一体何がおきたの!」
一呼吸つくのを待って、妖精族の娘が口を開く。
「ここは巨人の国。その剣を持つものをここへ招き入れるように頼んだのは私だ。まさかあのような鉄の暴れ馬に乗っているとは思わなかったのでな。少々手荒い歓迎になってしまった」
「馬? あっ! バリスタのバイク!」
フェーンが蒸気バイクに目をやると、それは既にくず鉄の塊と化していた。
「・・・まあ、いいか・・・」
がっくりと肩を落とすフェーンを気にした様子も無く、妖精族の娘は話を続けた。
「私は妖精族の『剣士』。名はこの探索の旅に出た時に捨てた。今はこの巨人の国の食客となっている」

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「そして、こちらは巨人族の女王ガイア陛下だ」
女王と紹介された巨人は、軽くあごを引いてうなずいてみせた。

「竜族殺しの剣の持ち手よ。お前達に話がある」
リンは剣をかき抱くようにして聞く。
「この剣のことを知っているのですか?」
「よく知っている。では、昔話から聞かせてやろう」

1000年の昔、さすがに私達妖精族の長老さえ赤子のころのことだ。
妖精族に一人の預言者が現れた。数々の予言を的中させ、いくつもの奇跡を行ったという。
預言者は最後に、1000年の後に世界のバランスが崩れ、妖精族は竜族に滅ぼされるだろうと予言した。
だが、その運命を変えるものが、とある洞窟の中にあるとも。
そして、その洞窟の中で見出されたのが、竜族殺しの剣なのだ。

話が終わったと見たフェーンが口を開いた。
「じゃあ、この剣はあなた達のものなの?」
妖精族の娘はふっと笑みをもらして答える。
「いや、違う」

巨人族の昔話をしてやろう
ふいに、体を、大地を揺さぶる低い大音声が響いた。ガイアが口を開いたのだ。

1000年の昔、巨人族に一人の預言者が現れた。数々の予言を的中させ、いくつもの奇跡を行ったという。
預言者は最後に、1000年の後に世界のバランスが崩れ、巨人族はドワーフ族に滅ぼされるだろうと予言した。
だが、その運命を変えるものが、とある洞窟の中にあるとも。
そして、その洞窟の中で見出されたのが、ドワーフ族殺しの剣なのだ。

「え?」
フェーンは怪訝そうな顔をした。

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ガイアが話している間、席をはずしていた妖精族の娘が二振りの剣を持って戻ってきた。
「この大剣がドワーフ族殺しの剣。そしてこれが、竜族殺しの剣だ」
妖精族の娘の腰にある竜族殺しの剣は、リンが持つ剣と瓜二つであった。
「人間の娘よ。お前の知る話をするがいい」
妖精族の娘は優しげな声とは裏腹に、有無を言わせぬ力を込めてリンに話しかけた。
「わ、私はなにも・・・」
「話せ」
「・・・せ、千年前に・・・預言者が・・・竜に滅ぼされないように、剣をくれた・・・」
「人間の巫女よ。お前は別の話を知っているのではないか?」
「し、知らない」
ギリギリと音をたてそうな眼光をさえぎるように、フェーンが妖精族の娘とリンの間に割って入り、妖精族の娘をにらみつけた。
「少年よ。私の調査では、同じ話がドワーフ族にも、深きモノにも、竜族にも伝わっている」
「え?」
「木を司る妖精族に竜族殺し。火を司る竜族に巨人族殺し。土を司る巨人族にドワーフ族殺し。金を司るドワーフ族に深きモノ殺し。水を司る深きモノに妖精族殺しの剣の話がな」
「???」
「わからないか? このサイクルは五行の相克に他ならない」
つまりは、世界の滅びのサイクルよ」地の底から響くようなガイアの声が頭上から降ってくる。
「そのサイクルに、人間は出てこないの?」
フェーンの問いに、妖精族の娘は初めて優しげに微笑んで答えた。
「人間は何も司らない。世界に寄生しているだけの存在だ」
娘よ。なぜサイクルの外にいる人間が竜族殺しの剣を持っている?」ガイアの大音声が、リンをうつ。
「わからない・・・」
「そんな昔のこと、リンが知ってるわけ無いだろ!!!」
ガイアに負けないとばかりにフェーンが叫ぶ。
「無理やり呼びつけて、知ってるわけの無いことを問い詰めるのがあなた達のやりかたなの!!」
「・・・」
・・・少年よ。すまなかった。せめてものわびに歓待しよう。旅の疲れを取るがいい


『剣士』は、微かに目を細めて二人の後姿を見つめながらつぶやいた。
「やはり、千年も前に死んだ男に、皆だまされているのだ。人間も、竜も」
「預言者リクよ。必ずお前の目的を暴いて見せよう」


ドラゴニアン・アイズ』、今回はここまででございます。

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コメント

出遅れましたが(^^A、今回もワクワク拝見しました~。
初回の謎めいた台詞の背景が明かされ、D・E世界の構造
が少しづつ見えてきましたね。
ドラゴン・エルフ・タイタン 他にもいろんな種族がっ!
どのように表現されるのか、今から楽しみです~。

投稿: アユミルゲ | 2006/04/12 22:22

アユミルゲさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
謎解き係の剣士と冒険アクション係のフェーンの話とがパラレルに進行するわけですが、さてさて、謎解きは絵にしにくい。どうしたものか(^^;。
気長にお待ちください。

投稿: freya | 2006/04/12 23:53

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