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2006/05/27

D.E. scene1152

ホル(思索階級)・ダンタロスの眼光には、竜の眼光ほどの力は無い。しかし、後数年思索を続ければ竜へと到ると言われている彼のそれは、心を砕き、体の自由を奪うには十分すぎるものであった。
いや、今は、そのはずであったと言うべきか。

ダーン!
その小さな体がたてるとは思えない地響きのような音とともに、倒れかかったフェーンの体が止まった。
床よ砕けよと言わんばかりに靴底を床にたたきつけ、フェーンは倒れるのをこらえた。
膝に爪が食い込んで幾筋か血が流れ、食いしばった口の中にも血の味が広がる。

06051400
言うことを聞かない全身の筋肉に力を込め、ギリギリと音を立てながら顔を上げる。
その燃え立つような瞳は、まだ砕けない、まだ闘うと、言葉以上に語っていた。

(ほう。耐えてみせるか。)
「小僧、名は?」
ダンタロスの突然の問いかけに、フェーンは一つ一つ区切るように答える。
「フェーン」
『フェーン』、その名がダンタロスの頭に響き渡った。
『我が名はフェーン! 誇り高きミトリアの騎士!』
ダンタロスの脳裏に、かつて聞いた声がこだまする。
驚きに目を見開いた彼は、何かに操られるように、かつてと同じ問いを投げかけた。
「それほど傷付きながら、何ゆえ立ち上がる?」
「約束したんだ・・・ボクがリンを護るって・・・」
『幼き日に約したのだ。サハラザード姫の騎士なのだと』

06051401
「その娘は、自らおぬしの元を去ったのではなかったか?」
「違う! リンは、ボクを護るために行っただけだ!」
『違う! 彼女は国を、私を護るために人質となったのだ!』

「贄となることを選んだ者を、助け出すなど傲慢ではないか?」
「・・・リンが選んだんじゃない。選ばされたんだ! もっといい答えがきっとある!」
『・・・彼女が選んだのではない。政治によって選ばされたのだ! 最良の選択肢では無い!』

グッグッグと、ダンタロスの咽がなる。

ダンタロスは、数百年前の出会いの日と、その後十数年にわたる戦いの日々に思いをはせた。
巨大な帝国に奪われた姫君を助けるために、竜人と魔女を左右に従え、わずかな仲間とともに戦い、ついにはそれを成し遂げた英雄<黒騎士>フェーン。
この少年はかつての英雄にちなんで、その名を付けられたのだろう。それにしても、なんとそっくりな一途さであろう。
彼は笑いをこらえられず、全身を揺らしてグッグッグと笑い声を上げた。

06051402
「小僧、娘を助けたければ、ワシを倒さねばならん。闘う覚悟はいいか?」
「倒せばいいんだね!」
フェーンはドラゴニアンの巨体をにらみつけながら叫ぶ。

06051403
「ふっ、小僧、来い! おぬしの力、見せてみよ!」
「やー!!!」
フェーンはドラゴニアンに向かって一直線にダッシュした。

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コメント

なんだか、どんどんすごい展開に!^^

提案です! Flashにしてみてはいかがでしょう!><

投稿: sak | 2006/05/27 21:55

sakさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
> なんだか、どんどんすごい展開に!^^
楽しんでいただけているようでよかったです(^^。
果たしてフェーンは勝てるのか? お楽しみに(^^。

> Flash
パラパラ漫画みたいなのを考えないでもなかったんですが、パンチ1発で力尽きそうなので・・・(^^;。
静止画をうまく使うやつは、センスが・・・(^^;。

投稿: freya | 2006/05/28 17:46

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