« D.E. scene1153 | トップページ | アフタードルパ その1 »

2006/05/29

D.E. scene1154

06051600
「やーーー!!!」
裂帛とはまさにこのことであろう。すべての力をのせて、鞘ごと剣を目の前の伸びきった膝の裏にたたきつける!
ガーン!
鞘とダンタロスの体がぶつかり、金属同士がぶつかる大きな音をたてた。
ガクン
膝が曲がり、大きくバランスを崩したダンタロスの巨体が後ろに倒れこむ。

06051601
ズズーン

06051602
ダンタロスが全身のばねを使って一瞬で飛び起きると、目の前にハアハアと肩で息をするフェーンが剣を杖にして立っていた。
「やった・・・ハアハア・・・倒したよ・・・」
「小僧、なにを? ・・・」
ダンタロスは、フェーンが何を言っているのか一瞬わからず、問い返す。
次の瞬間、
「グッグッグ! そうか、倒したか! グッグッグ、確かに、確かに地に倒れたわ! グッグッグ」
ダンタロスのうなり声のような笑い声と、フェーンの荒い呼吸音が響く。

しばらくして笑いの収まったダンタロスが言った。
「フェーン。娘は一番奥だ。行くがいい」
「うん」


ふらつく体を引きずるようにしてそれでも奥へと駆け出すフェーンを見送ったダンタロスは、その場を離れ、砦の中腹にある踊り場へと向かった。
先程から、時折すさまじい衝撃が伝わってきていたのだ。
(フェーンがここまで来たことといい、下で一体何が起きている?)
踊り場から身を乗り出すようにして、下を見る。
200メートルほどの眼下、砦の入り口付近に、いくつものクレーター状のものが見えた。
その中で溶けた岩石が白煙を上げているものもある。まるで噴火口が無数に口をあけたかのようであった。
(竜姫が本気で闘いでもしたのか?)
(む?)
クレーターのふちに何かを見つけたダンタロスは、踊り場の手すりを乗り越え、ほとんど垂直の山肌を飛ぶように駆け下っていく。
(竜姫か・・・)
駆け下りながら、数年前、突如彼の前に人間の女が現れた時のことを思い出していた。


06051603
「そなたの娘を庇護するがよい」
それが竜姫の最初の言葉だった。
「なんのことだ?」
とぼけるわけでなく、本当になんのことか見当もつかなかった。
「わらわは、そなたの眷属じゃ」
そんなこともわからぬのかと言う声が聞こえてきそうなほど、はっきりとばかにした口調だった。
竜姫は袖をめくり、まるでルビーから削りだしたかのような真紅の鱗が幾枚か現れた腕を見せた。
「それは・・・」
たしかに、自分は紅玉竜となる。そのしるしの真紅の鱗もあごの下に秘されてある。
ザロジナスは黒曜竜となるゆえに漆黒の鱗、ガルバトスは白銀竜となるゆえに銀白の鱗といったように、それぞれの眷属が異なるしるしの鱗を持っているのだ。
自分の鱗と、竜姫の鱗が同じしるしなのは疑うべくも無かった。
「・・・わらわは、双杖の魔女の末裔じゃ。心当たりがあろう?」
双杖の魔女・・・ともにフェーンを助けた我が盟友。
なるほど。そう思って見れば、確かに面影がある。いや、人間の姿など、毛色ぐらいでしか区別がつかないが、その魂のありように覚えがある。優しさを倣岸不遜な態度で覆い隠したところなど特に。
「ワシの子孫が人間の中にいられなくなってここに来たか。ここで暮らすための庇護が欲しいと言うか」
「数年でよい。わらわはすぐに竜となる」
恐るべきことに、その言葉どおり、竜姫は2年余りで竜となったのだった。


フェーンは、重い体をはやる心で叱咤して、牢の奥に進んでいった。
一番奥の扉を開ける。
鍵などかかっていない。そもそもドラゴニアンが牢に入れられることは無い。そして、ホル(思索位)が番をしている以上、他の生物ごときが逃げ出すことなど出来ないのだ。
「リン!」

06051604
返事は無く、薄暗い部屋の中には誰もいない。
明り取りの窓の下に、粗末なベッドが立てかけてあった。
明り取りの窓は、ドラゴニアンにとっては小さなものであったが、人間の少女が通り抜けるには十分な大きさがある。
フェーンは、ベッドに飛び乗り、窓から顔を出す。そこは、山の頂上近く、絶壁であった。
「リーーーーーン!!!」
絶壁にフェーンの声が響き渡った。


ドラゴニアン・アイズ』、今回はここまででございます。

|

« D.E. scene1153 | トップページ | アフタードルパ その1 »

コメント

まだまだハラハラが続くのですね~~ッ!
と言う事で、達人達の戦いに対してフェーン君の活躍はどうなるのだろう?
と心配していたのですが、無用な心配でした(^^。真摯な、決して甘くない
戦いぶりと、竜族の気高い精神性みたいなものが表れた物語で、とても
爽やかでした。ダンさん、あんたもええ漢や~~!
 
 という事で竜姫とは?リンの消息は?フェーンの戦いの行方は?そして
この世界に張り巡らされた計略の全貌は? ああ次回が待ちきれない

投稿: アユミルゲ | 2006/06/01 00:05

アユミルゲさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
フェーン君はもうひとがんばりです(^^;。

> 竜族の気高い精神性みたいなものが表れた
そう言ってもらうと安心できます。「竜となる」とはどういうことかにつながっていったりするので。

> 次回
ついにローニンの秘剣がうなる!
「我、空(くう)なるがゆえに、迅(じん)たらん」
お楽しみに。

いつになるやら(^^;。

投稿: freya | 2006/06/01 22:52

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: D.E. scene1154:

« D.E. scene1153 | トップページ | アフタードルパ その1 »