D.E. scene1232
竜姫の腕が、ローニンに向かってのびる。
それはローニンにあたる寸前に人間の腕から、鎧をまとった竜腕へと変じ、ローニンに襲い掛かる。
「なぜじゃ! なぜ人間にこだわる! そなたならすぐにでも竜となろう! なぜじゃ! なぜじゃ!! なぜじゃ!!!」
ジャリ!
ジャリ!
ジャリ!
ジャリ!
ローニンがカタナで竜腕を受け流すたび、金属を削る大音が響き渡る。
「あの日、あの時、そなたの竜眼を抉ったのは、人間ではないか! そなたの竜腕を潰したのは、人間ではないか!」
ガガリッ!
ガガリッ!
竜姫の気合の高まりとともに、すべての力を受け流すことが難しくなっていく。
「忘れぬぞ! ただ一人で侵略者を打ち倒し、館を、街を守ったそなたを、バケモノと呼んだ者どものことを!」
ゴウンッ!!
ついに力を流しきれず、ローニンの体が後ろに飛ぶ。
「・・・あの日、あの時・・・お前は死んだのだ。心を炎に焼き尽くされて」
ローニンはゆっくりと立ち上がり、カタナを構えながら静かに告げる。
「館も、街も、人々も、お前の炎に焼かれて灰燼と化した。多くは、無辜であった・・・」
「そなたも一時、竜への階梯を登ったのじゃ。わかっていよう。人間はこの世界では異端じゃ! 世界(わらわ)が、異界からの侵入者を排除して何が悪い!」
「世界を責めはしない。ただ、一人の少女を弔いたいだけだ」
「ッ! どうあってもわらわとともには来ぬか!」
ローニンは構えを崩さず、ゆっくりと竜姫に近づいていく。
竜姫は天を仰いだ。
その瞳から、涙がこぼれる。
「そなたが! そなたが、おらぬのなら! 何もいらぬ! すべてを、すべてを焼き尽くしてくれる!!!」
ローニンは、するすると流れるように動く。もしも、大地の代わりに湖面だったとしても、彼は波ひとつ立てずにその上を移動したであろう。それほどに、ローニンは静かであった。
竜姫がハッと気付いた時には、ローニンの顔が目の前にあった。
トス
小さな音が、世界に静寂をもたらした。
「・・・」
竜姫は自分の胸を貫くカタナを見つめ、哀れむように言った。
「鎧を貫く技は、人間の技。世界を殺すことは出来ぬ・・・?」
その違和感は、痛み。
その時、竜姫は自身の心臓が止まり、自身が死につつあることを知った。
(なぜ?)
声の代わりに血を吐きながら、その瞳がローニンに問いかける。
「気付かなかったか? 世界(すべて)を焼き尽くそうとしたときに、お前は世界ではなくなったのだ・・・」
D.E. scene1281
若い女の、弱々しい声が聞こえる。
「ねぇ、生きてる?」
聞き取れないほどか細く、静かな声が答える。
「lゝ゚ -゚ノl ・・・心肺停止まで30分程でしょうか」
「うーん、まさか異界の力まで使うとはね、反則だよ」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・お互い様では?」
「『殲滅の108衛星』(スターライトシャワー)を跳ね返すとは思わなかった・・・びっくりだね」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・私の近接戦闘中に衛星砲の一斉砲火を放つあなたにびっくりです」
「しょうがないじゃない」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・その一言で済ませるのですね?」
「うん」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・」
「ねぇ、生きてる?」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・心肺停止まで28分程でしょうか」
「ねぇ、知ってる? 死神ってイイ男なんだって。だからみんなついて逝っちゃうんだってさ。ちょっと楽しみだね」
「lゝ゚ ー゚ノl ・・・なるほど・・・そうすると、あれは死神ではないのですね」
「え? ・・・うわぁ・・・」
「グッグッグ。ワシのようなイイ男をつかまえて、随分な言い草ではないか」
彼女達の傍らには、巨大なドラゴニアンが立っていた。
ドラゴニアンは器用に二人の傷を手当てしていく。
「それにしても、この傷で息があるとはな・・・ふむ、おぬし達、半分向こう側にいるのだな?」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・それを知っているのですか?」
「やはりな。グッグッグ。人間の中には、かつて人間の住んでいた世界と強いつながりを持って生まれてくるものがある。帝国十二神将のうち九人までがそうであった。奴らもしぶとかったぞ」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・帝国?」
「ねぇ、なんで助けてくれるの?」
ドラゴニアンが牙をむく。ニヤリと笑ったのだとわかっても、体が動けば逃げ出しそうな迫力であった。
「おぬし達はフェーンのために闘ったのであろう? ならば・・・『フェーンの友はワシの友よ』。グッグッグ。おお、このせりふは何百年振か」
「lゝ゚ -゚ノl ・・・あぁ、あなたは、ダンタロスなのですね」
「ワシを知っているのか」
「lゝ゚ -゚ノl お伽話を思い出しました」
大きな竜のダンタロス、
泣くも笑うもグッグッグ。
大きな爪で岩をも砕き、
大きな鱗で仲間を守る。
フェーンの友のダンタロス、
フェーンの友はワシの友。
フェーンと・・・
『ドラゴニアン・アイズ』、今回はここまででございます。
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コメント
久々の『D.E』、連続で楽しませて頂きました。(>▽0b
竜姫の腕はもしや心滅…!?
漢ドラゴニアン・ダンタロスも再登場で…今回も、「もっと読みた~い!(>△<」なお話しでした~。
執筆お疲れ様でした。
次回はもっと写真も…f(^▽^;
投稿: けんぢ | 2006/11/25 16:04
けんぢさん。
管理人です。コメントありがとうございます。
いつも応援ありがとうございます(^^。
> 心滅…!?
そうです。
肩と股関節がアレなので、苦労しました(^^;。
あまりにポロポロ・ゴロゴロするので、「神姫のパーツにしちゃうぞ、コノヤロ(<無理)」といった感じでした。
次は、やはり妖精族の剣士をやっておかないとわけわからんにも程がある感じなので、そっちですかねぇ。
今回もいろいろいきなりでしたしねぇ。
投稿: freya | 2006/11/26 09:26