黄金のアーンヴァル:インターミッション
アヌビスが戻り、主なき部屋で充電したその時、クレイドルを介してある情報が流れた。
ありえないほどのエネルギーをもった黄金の炎。
それは「黄金のアーンヴァル」ではないのか?
皆が探し求めていた女神の手がかり。
にわかに研究所内に緊張した空気が漂い始めた。
楕円の巨大なテーブルの中央に、ひとりの神姫が立っている。
「爆発に伴う可視光を含む電磁波の混乱じゃ。ほぼすべてのセンサが使えぬ状況じゃった」
それが、追跡に失敗した理由を問われた答えだった。
「クッポォ」
『錬金術師』が何か言いかけた言葉を飲み込み、目を空中に泳がせたあと続ける。
「クケケ。お前らしくないのぅ、月読(ツクヨミ)。クケケ。」
月読は周りに座る20人ほどを見渡し、最後に、さも汚いものでも見るような眼で『錬金術師』を見た。
「そもそも、そなたらに報告せねばならぬ義務はないはずじゃ」
「クケケ。まったくもって、お前らしくないのぅ。クケケ。」
相も変らぬ耳障りな声とともに『錬金術師』が席を立ち、よたよたと会議室を出ていく。
「クケケ。後始末をしておくがよかろう。クケケ。」
自然に、会議は終了となった。
売店で飲み物と夜食を買って部屋に戻る途中、通路の先から声が聞こえてきた。
「ひとりで行くなど危険すぎる! 連携して捕えれば」
「あはははは♪ そのあとでバトルロイヤルか? ばからしいっ! 私の神器ミッドガルドは無限のエネルギーを生み出す。どれほどの威力があろうが負けるものか!」
「だが、あれは」
「うるさい! 黙れ! マスターは「行け! フェンリル!」とだけ言えばいいのだ!」
何か言いかけた研究員が私に気づいて口を閉ざす。
そのまま、白い通路を互いに無言のまますれ違った。
夜明けを待たず、ほとんどの研究員はひとりで対処することに決めたようだった。
いや、研究員というよりも、彼らの神姫たちがそれを望んだのだ。
ただ一つしかないそれを主に捧げるために。
だが、私は躊躇していた。
「賢者の石?
ああ、確かに、あれはそう呼ばれてもいいかもしれませんね。
計測器はすべて停止してしまいましたが、あの場にいた誰もがあの力を「理解」したのではありませんか?」
そう。私はあの場にいたのだ。
女神が降臨したあの場に。
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